「文章を書きたいと思うならA4コピー用紙とサインペンを用意しろ」と勝手にコピーをつけたくなってしまった本。
まずこの本を読み始める前に、A4コピー用紙1箱とサインペンを何色か用意してほしい。
そして読み進めながら、著者がいうことを実際に手を動かして試してほしい。
「いっているお前の文、全然ダメじゃん!」というツッコミは、修行中ゆえ見逃してください。
『言葉にできるは武器になる。』をご紹介したいと思います。
著者:梅田悟司
単行本(ソフトカバー): 256ページ
出版社: 日本経済新聞出版社; 2016.8.25版 (2016/8/26)
言語: 日本語
ISBN-10: 4532320755
ISBN-13: 978-4532320751
発売日: 2016/8/26
文章術の本を何冊か読んでみました。それぞれのシチュエーションでのテクニック的なことが多く、文章を書く上で役立ちそうですが今自分が欲しているものとは少しずれがあるように思えました。些細なことでも面白く書ける魔法のような技術を図々しく探していたのです。そんなものあるわけないですよね。
そんな時出会ったのがこの本「言葉にできるは武器になる」(ただ著者はそんな魔法は無いと仰っていますけど。)
まずタイトルが気に入りました。「言葉にできる」自分の意志を感じます「武器になる」人生を自らドライブする道具の象徴としての強さを感じます。
迷わずAmazonでポチっとしました。(こういう時はKindleではなくリアル本にします。)
届いた本の奥付に19刷とあり、おのずと期待が高まります。
本を読むときはいきなり本文に行きたいところを我慢して表紙、裏表紙、帯、目次、奥付とか周辺をしつこくみます。
『世界はだれかの仕事でできている。』
『 この国を、支える人を支えたい。 』
『 その経験は味方だ。 』
著者はこの有名なコピーを作った人でした。
どうりで本のタイトルがカッコいいはずです。
中身は
第1部 「内なる言葉」とは何?
第2部 「内なる言葉」の扱い方
第3部 「内なる言葉」を外へ向かう言葉に変換する技術
という3部構成でご自分の実践されてきた方法論を展開されています。
「内なる言葉」とは著者曰く
日常のコミュニケーションに用いる言葉とは別物であり、無意識のうちに頭にうかぶ感情や、自分自身と会話することで考えを深めるために用いられている言葉である。考えるという行為は、頭の中でこの「内なる言葉」を駆使していると言い換えることもできる。 本文22ページより
頭の中でぐるぐる考えているときに使っている言葉のようです。
そして
「内なる言葉」の存在に意識を向け「内なる言葉」を磨く鍛錬を積めば、言葉の生まれる源泉としての思考が鍛えられ湧いて出てくる言葉に深みや重みが増す
本文23ページより
例えば新しくしたiPhone、いまどきは買い替えると同じiPhoneでもサイズも違ってくるし、なかなか手に馴染みません。しかし毎日使っていれば触っただけで、上下、ウラ、オモテ がわかるようになります。これで意識せずとも使いこなせる、(私は暗闇のなか手さぐりでわかるiPhoneのデザインに惚れてます。JAWBONEにも惚れてます。)身体の一部となった本当の意味での「道具」となりはじめます。
言葉も道具として割り切って、使いこなせるまで継続できれば人生を切り拓く道具になりえると著者は言いたいのでしょう。
その手助けを十分に果たせる本だとおもいます。
第2部からは具体的な「内なる言葉」の取り扱い方が述べられています。
まず「内なる言葉」を書きだす。 それを「T字型思考法」を使って充分拡散させてから、グループ分けします。
足りない箇所を探し埋めてゆくという視点を広げる努力をする。
客観性確保のため時間を置き、さらに真逆のパターンを考え立場の違う人の視点で考え直してみる。
この一連の流れを繰り返す。
ここで出てくる「T字型思考法」とは、「なぜ?」「それで?」「本当に?」
と問いかけながら考えを深めたり、進めたり戻したりすることによって内なる言葉の解像度を上げてゆくことです。
著者はアウトプットする時の道具も提示してくれます。
それがA4コピー用紙とサインペン。
手元にA4コピー用紙はたくさんあります。
でもサインペンがありません。
わたくし文具好きではありますがサインペンには一切興味がありませんでした。
しかしここでサインペンを用意しないとこの著者の言いたいことが受け取れないような気がして、読んでいる途中にも関わらず近所の文房具屋に走りました。(走ったというのは嘘で歩いて行きました。でもすぐ買いに行ったのは本当です。このブログでは故意に嘘はつきません。)
赤と黒色はどうも馴染めない気がしていましたが空色が気に入ったので8色セットを買ってきました。
早速サインペンで小さなメモ用紙に走り書きする要領で大胆に文字を書いてみました。
「キモチいい!」
線が細いと必然的に文字は小さくなりますが、太いと大きく書かないと逆に書きずらい。
するとペンの動く速度が普段より増しました。
手の動きが速くなるとそれに伴って頭の回転が良くなったような気になります。
あれこれ頭の中だけで考えていた時よりも、ずっと「スッキリ」するのは確実です。
A4に言葉を吐き出すときはあまり長い文章にはしないで、1枚にひとつづつ箇条書きにしていきます。
あとでグルーピングしますからこの段階ではとにかく数を出していく感じです。
よい文章が書けるようになるかどうかは、始めたばかりなのでよくわかりませんがとにかくこの作業「キモチいい」です。
モチベーションがどんどん上がっていきます。
なぜA4コピー用紙とサインペンなのかがよくわかります。
第3部では外に向かう言葉に変換するテクニックを、2つの戦略に分けて説明してくれています。
第1戦略では日本語の「型」を知るとして
1)喩える 2)繰り返す 3)ギャップをつくる 4)言いきる 5)感じる言葉を使う
第2戦略では言葉を生み出す「心構え」を持つとして
1)ターゲティング 2)常套句を排除する 3)1文字でも減らす 4)きちんと書いて口にする 5)動詞にこだわる 6)新しい文脈をつくる 7)似て非なる言葉を区別する
といった方法を著者が実践してきたことに基づいて解説してくれます。
特にターゲティングの方法が具体的で真似しやすい。
「みんなに伝えようとしても、誰にも伝わらない」そのことを心に留めて、相手1人ひとりに向けて、言葉を紡いでいく必要がある。
本文208ページより
ではどうしたらいいのでしょうか?。
それは「あなたに伝えたいことがある」という文節を、自分が伝えたいことばの前にあてがってみて考え直してみる方法です。
「あなたに」で伝えるべき相手が明確かどうかをうながす。
「伝えたいことが」で心から湧き出してくる思いが本心かどうか確かめる。
「ある」で断言しきれる内容かを判断する。
本当に著者のおっしゃるように、やってみるとその文への本気度がわかります。
ただ、いちいちこれをやってると相当時間がかかります。なるべくこのように精査した方がよい文になるのでしょうがムズカシイ。
ムズカシイからこそ差別化できるということですか?
がんばります。
「と、言ってるわりに全然文章上手くなってねーじゃねーか!!」
ガマンしてください。
「内なる言葉」「T字型思考法」など覚えやすいキーワードを使って、言葉を生み出す、思考する方法を分かりやすく実践しやすく説明してくれる素晴らしい本です。(言いきりました。)
ps. 最後に気が付いたのですが表紙の「言葉にできる」のアンダーライン、赤いサインペンじゃないですか!
おしゃれです。
「とっくに気が付いていたよ」というあなた流石です。